
海外ひとり旅の「食事問題」。レストランに入れない夜を乗り切る実践ガイド
海外ひとり旅で「一番困ることは?」と聞かれたら、私は迷わず「夜ごはんです」と答えます。英語が話せないことでも、道に迷うことでもありません。夕方6時を過ぎ、レストランの灯りがともり始める頃。メニューを手に取っては戻し、店内をのぞいては立ち去る。“入る”と”やめる”を三往復。五往復する頃には、もはやレストランではなく、自分との根比べです。
昼間は平気。美術館にも、市場にも、1人で入れる。知らない街を何キロも歩けるのに、夜になると急に「ひとり」という二文字が肩に乗ってきます。今回は、そんな”夜7時問題”を乗り切るために、私が実際に旅先でやっている方法をシチュエーション別にご紹介します。
目次
Case1:レストランの前で立ち止まってしまう

「人気店だから入ってみたい」そう思って来たのに、店の前まで来た途端、急に足が止まる。店内を見ると、家族連れ、恋人同士、友達グループ。なんだか自分だけ招待状を持っていない人みたいな気分になります。そんなとき、私はメニューより先に“席”を見ます。
チェックするのは、この4つだけです。
・ テラス席がある
・ 一人客がいる
・店員さんと目が合う
この条件がそろっていたら、かなり入りやすい店です。反対に、重厚なテーブルクロスがかかり、2人席ばかり並ぶレストランは、無理に挑まなくても大丈夫。旅は「人気店を制覇するゲーム」ではありません。居心地よく食べられることのほうが、ずっと大切です。
Googleマップの口コミで、「Solo traveler」「Solo dining」という言葉を探してみましょう。「1人でも入りやすかった」という口コミは、高評価レビューより参考になりますよ。
Case2:店内がカップルだらけだった

これは、あります。しかも世界中にあります。恋人という生き物は、どういうわけか私の行く店に先回りしている気がします。そして皆さん、とても幸せそうです。そんな中、1人。でも、ここで引き返さないでください。そんなときは、迷わず
「カウンター席ありますか?」
これだけで十分です。カウンター席は、一人旅の特等席。料理人の手元を眺めたり、グラスを磨くスタッフを見たり。人は「ひとり」でいると孤独になりますが、「何かを見ている人」になると、不思議と気持ちが落ち着きます。
私は以前、イタリアで、一番目立つ真ん中のテーブルへ案内されたことがあります。周りは全員カップル。完全にスポットライトです。ワインを飲んでも落ち着かず、料理の味も半分しか覚えていません。
それ以来、入店したら最初に
「Counter?」or「Bar seat?」と聞くようになりました。
たった一言で、食事の快適さは大きく変わります。
Counter seat, please.
(カウンター席をお願いします。)
これだけ覚えておけば十分です。
Case3:注文が不安で入れない

英語が苦手だから。現地の言葉が読めないから。その気持ち、よくわかります。でも今は、旅人にとって本当にいい時代です。
Google翻訳があります。写真付きメニューもあります。QRコードを読み込めば、自動翻訳できる店も増えました。昔の旅人は、辞書を片手に「これは牛なのか、羊なのか」を想像で注文していました。私も昔、「ビーフシチュー」だと思って頼んだ料理が、レバーの煮込みだったことがあります。
文明は積極的に使いましょう。旅で見栄を張る必要はありません。
指差し注文は、世界共通語です。笑顔で
This one, please.
(これをお願いします。)
これだけで十分通じます。英語が上手な人より、楽しそうに注文する人のほうが、店員さんも助けてくれることが多いものです。
Case4:疲れて、もうレストランへ行く気力がない

観光地を一日中歩き回り、石畳で足は棒。ホテルに着いたらシャワーを浴びるだけで精いっぱい。そんな日に「さあ、おしゃれなレストランへ行こう!」という気持ちになる人はきっと体力おばけです。私は違います。
こういう日は、迷わず予定を変更します。向かう先は、スーパーかデリ。パンとチーズ、カットフルーツ、サラダにスープ。ワインを一本買ってホテルへ戻れば、それだけで立派な夕食です。
「せっかく海外なのにもったいない」と思うかもしれません。でも私は、旅は”全部頑張る”から疲れるのだと思っています。

今日は部屋で食べる。そのぶん明日は朝から元気に歩ける。
そんな日が一日くらいあっても、旅の満足度は下がりません。むしろ翌日の機嫌がよくなります。
ホテル選びのときは、近くにスーパーがあるかもチェック。Googleマップで「Supermarket」と検索しておくと、到着した日の夕飯にも困りません。
Case5:高級レストランへ一人で行ってみたい

「一人じゃ浮きませんか?」これはよく聞かれる質問です。答えは、「思っているほど浮きません」。ただし、夜よりおすすめなのはランチです。
ランチコースなら価格も抑えられますし、おひとりさまも珍しくありません。サービスにも余裕があり、料理の説明をゆっくり聞けることもあります。それに、1人だと料理に集中できます。誰かと話しながら食べるのも楽しいけれど、「このソース、おいしいな」とだけ考えている時間も、案外ぜいたくです。
服装に迷ったら、「少しだけきれいめ」を意識。海外では完璧に着飾る必要はありませんが、清潔感があるだけで自然になじみます。
Case6:屋台や市場で食べたい。でも衛生面が心配

旅先の屋台は魅力的です。いい匂いがして、地元の人でにぎわっていて、「ここで食べたら旅っぽい」と思わせる力があります。でも、選び方には少しコツがあります。私が見るのは、この4つです。
・料理を作り置きしていない
・火を通した料理
・食材の回転が速そう
逆に、お客さんがほとんどいない店や、長時間常温で並んでいる料理は避けます。旅先で一番もったいないのは、翌日をホテルで過ごすこと。胃腸も、大切な旅の相棒です。
迷ったら、「地元の人が食べているもの」と同じものを選ぶ。これが一番失敗が少ない方法です。
Case7:相席になったらどうしよう

日本では少し身構えてしまう相席も、海外では珍しくありません。でも、心配はいりません。軽く笑顔で「Hi」。それで十分です。
本を読んでいる人もいれば、パソコンを開いて仕事をしている人もいます。1人で食事をすることは、日本よりずっと日常の風景です。
「話しかけられたらどうしよう」と思うかもしれませんが、実際には何も起きないことのほうが圧倒的に多い。旅は映画のように毎日ドラマチックではありません。
席が空いているか確認したいときは、
Is this seat taken?
(この席、空いていますか?)
これだけ覚えておけば安心です。
「ちゃんとした夕飯」をやめると、旅はもっと自由になる

旅へ出ると、「夕飯はレストランで食べるもの」という思い込みに縛られがちです。でも、考えてみれば不思議です。朝はパンだけでも満足なのに、夜だけ急に「ちゃんとしなさい」と言われる。旅先なのに、夕飯だけ妙に保護者が厳しい。
カフェでスープでもいい。
市場で買ったお惣菜でもいい。
ホテルでチーズとワインでもいい。
その日の自分に合った食事を選べることこそ、一人旅の特権です。SNSには、予約困難店や美しい盛り付けの料理が並びます。もちろん、それも旅の楽しみ。でも、一人旅は「映える夕飯選手権」ではありません。誰かに見せるためではなく、自分が明日も元気に歩くための一食です。
だから、レストランの前で立ち止まったら思い出してください。
勇気を出して入る日があってもいい。
スーパーへ向かう日があってもいい。
パンを片手にホテルで映画を見ながら、「今日はこれで大正解」と思える夜があってもいい。
旅の自由は、飛行機を予約した瞬間ではなく、「こうしなきゃ」をひとつ手放した瞬間に、ようやく始まるのかもしれません。
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