
文化を受け継ぎ、未来へ繋ぐ。手仕事の職人に光を当てる「横浜マイスター」の取り組み
「横浜マイスター」は、地域で活躍する優れた技能職者を選定する横浜市の事業です。30周年を迎える 2026年3月11日(水)、横浜市庁舎にて「横浜マイスター」の活動を紹介するイベントが開催されました。取材に駆けつけたワタシト編集部がその様子をレポートします。
目次
手仕事・手作業の達人が選定される「横浜マイスター」
今年30周年を迎える「横浜マイスター」。横浜市が、市民の生活・文化に寄与する優れた技能職者を選定しています。
港町としての歴史があり、文化の醸成されている横浜だけに、マイスターの職種は多岐に渡ります。例えば、料理の達人であったり、建具や工芸品の職人、なかには弦楽器を専門とする珍しいマイスターも。共通しているのは、手仕事・手作業を極めた方々であること。そして、後進の育成と技能の継承に努めているところです。
ワタシトを運営するユアマイスターも、掃除の“マイスター”が事業の主役。横浜マイスターの取り組みに共鳴し、今回、取材のご縁に恵まれました!
横浜マイスター30 周年を記念した「弦楽器と写真で紡ぐ横浜の匠」

| イベント名 | 弦楽器と写真で紡ぐ横浜の匠 |
| 開催日 | 2026年3月11日(水) |
| 会場 | 横浜市役所 1F アトリウム |
| 内容 | 横浜マイスター写真展 福田喬史氏をお招きしたトークイベント 福田氏製作弦楽器によるミニコンサート(弦楽四重奏) |
30周年記念イベントの開催場所は、横浜市庁舎1Fのアトリウム。プロのフォトグラファー・倭田宏樹氏が撮影した横浜マイスターの写真がパネル展示され、来場者を出迎えます。

撮影場所はマイスターたちの仕事場であり、写真はいつもの作業の様子を捉えたもの。1枚1枚に表現された、長年技術に打ち込んできたマイスターの含蓄ある姿に感銘を受けました。
横浜マイスターを撮影した倭田宏樹さん
会場にいらっしゃったフォトグラファーの倭田宏樹さんに、横浜マイスターの撮影についてお話を伺いました。

ーーワタシト編集部(以下省略):横浜マイスターを撮影するようになった経緯をお聞かせください。
倭田さん:僕はライフワークとして「働く人」のポートレートを撮ってきたのですが、素敵な職人さんを探していたところ、弦楽器の専門家である福田喬史さんの存在を知りました。福田さんにご連絡して写真を撮らせていただいたところ、折しも横浜マイスターに選定されたというお話を伺って。それならば、ぜひ他の横浜マイスターも撮影させていただきたいと、協力を申し出たのがきっかけです。

ーーそれぞれのマイスターの魅力が写真から伝わってきます!
倭田さん:僕が職人さんの現場に伺って、実際に作業していただきながらお邪魔にならないように撮影しています。人物だけではなく、仕事場の空間を含めて、フェルメールの絵画のように1枚で表現することを意識しています。


ーー多様なマイスターの方々ですが、倭田さんから見て、みなさんに何か共通しているところはありますか?
倭田さん:指先ですよね。機械では真似できないことを先頭に立ってやっている方々なので、指使いが違います。そこがわかるように意識して撮るようにしています。
ーー指先までマイスターの技術とこだわりが表れているんですね。倭田さん、ありがとうございました!
弦楽器のマイスター・福田喬史さんを招いたトークイベント

横浜市庁舎のアトリウムに設けられたステージでは、弦楽器を製作するマイスター・福田喬史さんのトークイベントが行われました。福田さんは令和7年度に第30期横浜マイスターに選定されています。
福田さんは、2002年チャイコフスキー国際コンクール製作者部門(チェロ)で総合第3位、音響第1位を受賞した弦楽器製作の匠。子どもの頃にヴィオラに触れて惹かれたことがきっかけで弦楽器の職人を目指すようになり、現在は神奈川県内にアトリエをかまえています。
トークイベントでの福田さんいわく、楽器の製作者の個性を潰さない修理を心がけているとのこと。例えばバイオリンは、500 年前の製作者のカンナ跡まで残っているタイムカプセルのようなもの。実用品であり美術品でもあるので、受け継ぐ責任の重大さを感じると言います。
驚いたことに、バイオリンには80以上ものパーツがあり、特に表板の調整が難しく、0.01ミリ単位の変化が音に影響するのだとか。福田さんは「これでいい?」と楽器と会話しながら作っているそうです。
修理に半年、製造に1年かかることもあるという弦楽器。その過程で演奏者と打ち合わせを重ねるそうで、「修理した楽器が演奏されると胸にくるものがある」と福田さんは語っていました。
マイスターの手がけた楽器の音色を楽しめるミニコンサート

この日はトークイベントの後には、福田さん製作の弦楽器を使った、「アンサンブルMIZUHO」による弦楽四重奏のミニコンサートも開催されました。製作の裏側を伺うと、音色が違って聞こえるから不思議です。
オーケストラであれば、楽器の数だけ製作・修理に携わる職人がいるーー。マイスターの技は、見えないところで私たちの社会を支え、豊かなものにしてくれているのです。そのことが実感できる、またとない機会でした。
「職人は頑固すぎてはいけない」横浜マイスター・福田喬史さん

ーーワタシト編集部(以下省略):子どもの頃に弦楽器に魅了される機会があったそうですね。
福田さん:まさに今日のコンサートのようなカルテットの演奏を聴きに行ったことがあり、楽器に興味を持つきっかけとなりました。中学生のときにオーケストラの楽器を触る企画があったのですが、そのときにヴィオラに初めて触り、楽器そのものの美しさに魅了されました。
ーー音楽に興味を抱いたら演奏家になりたいと思う人の方が多そうですが、福田さんは製作者になりたかったんですね。弦楽器の製作を習得するにはお師匠さんにつくものなのでしょうか?
福田さん:そうです。私は高校卒業後に東京ヴァイオリン製作学校に進み、親方のもとで習いました。その後はドイツに渡って学んでいます。
ーー新しい楽器の製作と修理とでは、お仕事の割合としては、どちらが多いのでしょうか。
福田さん:オーダー品の製作も行っていますが、年に1本を作れればいい方で、ほとんどは修理です。演奏会の前にちょっとした調整を依頼されることが多いですね。人間の体と同じで、弦楽器のコンディションは日々の天候でも変わるほど繊細。演奏会場によっても調整が必要です。
ーー福田さんの、職人としてのこだわりは何でしょうか。
福田さん:頑固すぎてはいけないと思っています。自分のやりたいことや流儀を押し通すのではなく、音楽家の方々とコミュニケーションを図りながら製造、修理を行なっていく。お客様に喜んでもらうことをもっとも大事にしています。
伝統を継承し、未来への架け橋となる横浜マイスターに注目!
横浜市は、今回のようなイベントの他に、技能職の後進育成を見据えた実演・講演を行なったり、マイスターを紹介するガイドブックを発行したりしています。また、年に1度の「横浜マイスターまつり」では、技能体験教室を開催したり、料理の提供、作品の展示・販売も行っています。
手仕事・手作業のマイスターは、伝統を受け継ぎ未来へと繋ぐ、かけがえのない存在です。ワタシト編集部は、これからも横浜マイスターの活動を追いかけて、日本が誇る職人の技と魅力をお伝えしていきます!
▶︎横浜マイスター事業
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/kigyoshien/ginou/meister.html
▶︎YouTube チャンネル「ハマの職人・横浜マイスター」
https://www.youtube.com/playlist?list=PLGTLmyp8WvbcvFfXNl0yIEtID4yiJTlJq
※本記事の内容は、本記事作成時の編集部の調査結果に基づくものです。














