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更新日: 2026年6月1日

カレドニアン・スリーパーで、寝ながらスコットランドへ。大人の一人旅と夜行列車のロマン

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旅先にスコットランドを選んだ理由はいくつもあります。ハイランドの景色。ウイスキー。霧。石造りの街。でも、本当のことを言うと、いちばんの目的はカレドニアン・スリーパーでした。

ロンドンからスコットランドへ向かう英国の寝台列車。眠っているあいだに、街の空気も、窓の外の色も変わっていく。飛行機なら、ロンドン↔︎グラスゴー間なんて1時間半ほど。効率だけで考えたら、完全に飛行機の勝ちです。でも旅って、時々“わざわざ”のためにしたくなる。時間がかかる。お金もかかる。なのに乗りたい。寝台列車には、ロマンがあります。どこかの個室で密室事件が起きていそうだし、額に傷のあるメガネの少年が乗っていても、たぶん私は驚かない。大人になっても、こういうものにちゃんと、ときめきを感じる人でいたいと思いました。

英国を代表する寝台列車、カレドニアン・スリーパーへ

ロンドンユーストン駅
撮影:ワタシト編集部

カレドニアン・スリーパーは、ロンドンとスコットランド各地を結ぶ夜行列車です。英国国内に現存する寝台列車はわずか2つ。そのうちのひとつが、このカレドニアン・スリーパー。世界中の“鉄男”や“鉄子”たちの憧れでもあり、旅好き界隈ではかなり有名な存在です。

私はそこまで鉄道に詳しいわけではありません。時刻表を見て興奮する能力は持ち合わせていない。でも、旅ジャンキーではある。そして、空港より駅、飛行機より鉄道が好きです。

空港って、便利なんですよ。でも便利すぎる。気づいたら目的地についている。移動が、ほぼ“圧縮ファイル”。その点、駅にはちゃんと「遠くへ行く感」がある。

少し古びたホーム。
深夜のアナウンス。
でかい荷物を抱えた人たち。

あの、“人生の途中感”みたいな空気が好きなんですよね。

客室にはクラスがある。ロマンにも階級社会がある

かレドニアンスリーパーラウンジ
撮影:ワタシト編集部

カレドニアン・スリーパーの予約は、公式サイトから可能です。出発地と目的地、日程、人数を入力すると、各クラスの空き状況と料金が表示される仕組みで、飛行機やホテル予約に近い感覚。

基本的には最大12か月前から予約可能ですが、人気のダブルルームはかなり早く埋まります。私は「まだ先だし余裕でしょ」と思っていたら、ダブルはすでに完売。世界中の鉄道ファン、“ロマンへの初動”が異様に早い。特に夏休みシーズンや週末は混みやすいため、「乗りたい」と思ったら早めの予約がおすすめです。

カレドニアン・スリーパーには、いくつかクラスがあります。

上から、

ダブル
クラブ
クラシック
シート

という構成。

ダブルはベッド固定型の豪華個室。真っ先に売り切れていました。みんなロマンへの課金に迷いがない。結果的に、私は“残り2室”だったクラブルームを予約。取れただけでもかなりラッキーでした。クラブは二段ベッド仕様の個室で、シャワーとトイレ付き。ここ、最初ちょっと不安だったんですよね。

「二段ベッドってことは、知らない人と相部屋なの?」

もし深夜に見知らぬおじさんと向かい合ったらどうしよう。気まずすぎる。修学旅行でもだいぶ無理だったのに。でも、一人予約の場合は個室利用。相部屋にはなりません。

海外って、日中ずっと気を張っているもの。言葉も違うし、地図も見るし、治安も気になる。だから夜くらい、“完全にひとりでぼんやりできる空間”があるのは、本当にありがたい。

カレドニアンスリーパーラウンジ
撮影:ワタシト編集部

ダブルとクラブ利用者は、乗車前に専用ラウンジが使えます。これがまた、かなり良かった。ロンドン・ユーストン駅の喧騒から少し離れた空間で、軽食や飲み物を楽しみながら列車を待つ時間。「ああ、今から寝台列車に乗るんだな」という気持ちが、じわじわ高まっていく。ビールやコーヒーを片手に、これから北へ向かう人たちが静かに過ごしている。

かレドニアンスリーパーラウンジ
撮影:ワタシト編集部

空港ラウンジとも少し違う。もっと静かで、もっと“これから旅が始まる感”がある。飛行機って、搭乗時間ギリギリまでスマホを見て、気づいたら空を飛んでいることが多いじゃないですか。でも寝台列車は、「これから旅に出ます」という助走の時間がちゃんとある。

あれが、たまらなく好きでした。

部屋は驚くほど狭い。でも、それがいい

かレドニアンスリーパー室内
撮影:ワタシト編集部

実際に部屋へ入って、まず思ったのは、

「せっっっま」

でした。

想像以上に狭い。

立ち上がって肩をぶつける。
振り向いて肘をぶつける。
荷物を取ろうとして膝をぶつける。

寝台列車、人間と家具の距離感がおかしい。でも、その狭い空間に、

ベッド
洗面台
シャワー
トイレ

これがパズルみたいに詰め込まれている。その感じが、たまらなく好きでした。“快適なホテル”ではないんです。でも、“旅の秘密基地”なんです。不便さまで含めて、旅情。効率を極めたビジネスホテルにはない、“無駄のときめき”がある。

値段は高い。でも、ロマンってだいたい高い

かレドニアンスリーパー
撮影:ワタシト編集部

ちなみに、料金はなかなかします。

クラスごとに£100前後の差があり、私が利用したクラブルームは£260ほど。日本円にすると約48,000円。円安の中で見るには、かなりの破壊力です。予約画面を見ながら、一回そっと閉じました。

「ロマン、高いな」

ロンドンからグラスゴーなら、飛行機で約1時間半。値段も時間もそちらのほうが圧倒的に合理的です。でも、私はこの“わざわざ感”こそ旅の醍醐味だと思っています。

時間をかけること。
遠回りすること。
効率だけでは残らない記憶を持ち帰ること。

大人になると、何でも“タイパ”で測られるじゃないですか。でも、人生の記憶って、だいたい無駄な時間に宿る。

朝食はポリッジだった。全然足りなかったけど

ポリッジの朝食
撮影:ワタシト編集部

実はかなり楽しみにしていたのが、ラウンジカーでの朝食でした。知らない国の寝台列車で、揺られながら朝ごはんを食べる。その響きだけで、もう映画。でも私が乗車したときは、ラウンジカーのサービス自体が停止中。人生、そういうことある。

しょんぼりしながら、前夜のうちに注文していた朝食を部屋で食べました。出てきたのは、スコットランドの伝統的なおかゆ“ポリッジ”。オーツ麦と牛乳で作る、素朴な料理です。

これがまた、優しい味。…優しいんだけど、量が全然足りない。結局、グラスゴー駅に着いてすぐパンを買いました。ロマンと空腹、人は両立できる。ちなみにスコットランド名物のハギスは、私はちょっと苦手です。

羊の腎臓・肝臓・肺を羊の胃袋に詰めて茹でる料理なんですが、説明だけ聞くと急にスプラッター映画なんですよ。でもポリッジは好き。フランスの回復食リオレも好き。つまり私は、おかゆが好きなんです。旅をすると、結局、自分の胃袋の限界と好みに向き合うことになる。

夜行列車には、“物語の時間”が流れている

かレドニアンスリーパーの車窓
撮影:ワタシト編集部

深夜、静かに揺れる車内で、窓の外をぼんやり見る。駅に停まるたび、知らない街の名前が表示される。その感じが、とても不思議でした。真夜中の駅って、“生活”と“夢”のあいだみたい。

ホームに人影が立っている。
でも誰も大声を出さない。
暗いホームに、オレンジ色の灯りだけが浮かんでいる。

「ここはどこなんだろう」と思う。でも、ちゃんと調べない。その“わからなさ”ごと、旅の中にいたかった。

飛行機って、一瞬で景色を変えてしまうけれど、夜行列車は違う。

ロンドンの夜が、少しずつ遠ざかっていく。
駅に停まりながら、静かに北へ向かっていく。

その“移動している時間”を、ちゃんと身体で感じられる。

かレドニアンスリーパーの車窓
撮影:ワタシト編集部

朝方、揺れで少し目が覚めました。カーテンを少し開けると、窓の外がゆっくり青くなっている。完全な朝ではない、夜の名残がまだ残る色。

霧。
低い雲。
湿った草原。

遠くに羊が見えた気がしたけれど、寝ぼけていたので、たぶん石だったかもしれません。

でも、あの景色は本当にきれいでした。“絶景!”みたいな派手さじゃないんです。静かで、冷たくて、少し寂しい。でも、「ああ、ちゃんと遠くへ来たんだ」と思わせる景色。

寝ぼけたまま歯を磨き、ぼさぼさの髪で窓を見る。顔は終わっていたと思う。でも、その感じが妙によかった。

誰にも見せない朝。
観光地ではない時間。

夜行列車には、“旅の裏側”みたいな時間があります。

そして私は、そういう時間のために旅をしているのかもしれないと思いました。

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大人の一人旅

※本記事の内容は、本記事作成時の編集部の調査結果に基づくものです。
※本記事に掲載する一部の画像はイメージです。
※本記事の内容の真実性・確実性・実現可能性等については、ご自身で判断してください。本記事に起因して生じた損失や損害について、編集部は一切責任を負いません。

執筆者
ライター
おだりょうこ
猫と旅、音楽と映画で形成されたライター&エディター。旅欲が止まらない旅ジャンキー。料理は作るの食べるのも好き。日々の暮らしにひとさじほどの丁寧さを意識することを心がける日々。
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