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更新日: 2025年12月24日

南仏、フランスで最も美しい村をめぐる。大人の一人旅は、少し遠回りがちょうどいい

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南仏と聞くだけで、少し気持ちが浮きます。太陽、石造りの家、ワイン、ラベンダー。なんとなくおしゃれで、人生うまくいっていそうな人たちが歩いていそうな場所。でも実際に行ってみると、思っていたよりずっと静か。午後になると店は平気で閉まり、広場には観光客より猫のほうが多い。華やかというより、拍子抜けするほどのんびりしている。けれど、その肩の力の抜け方が、不思議と心地いい。急がなくていい、全部見なくていい。大人の一人旅には、そんな空気がちょうどよく感じられました。

今回は、私が実際に歩いた南仏の小さな村を例に、「フランスで最も美しい村」と呼ばれる場所の魅力や、大人の一人旅での楽しみ方を紹介します。

フランスの“王道”から、少し外れてみた

南仏旅行
撮影:ワタシト編集部

フランスといえば、まず思い浮かぶのはパリ。南仏なら、カンヌやニースといった華やかな街が王道です。

もちろん、それらは魅力的です。ただ正直なところ、いつ行っても人が多く、のんびりとは言いにくい。「癒やされたい」と思って来たのに、気づけば行列に並んでいる。そんなことも少なくありません。

一方で、フランスにはもうひとつの顔があります。都会の喧騒から少し離れた場所に点在する、小さな村たちです。派手さはないけれど、時間の流れが穏やかで、歩く速度が自然と落ちる。大人の一人旅でしっくりくるのは、むしろこういう場所でした。

「フランスで最も美しい村」とは?

南仏の小さな村
撮影:ワタシト編集部

そこで知っておきたいのが、「フランスで最も美しい村」と呼ばれる存在です。これは、Les Plus Beaux Villages de France(フランスで最も美しい村協会)が認定する村々のこと。観光地ランキングではなく、景観や歴史、村の規模、保存状態など、厳しい基準を満たした場所だけが選ばれます。

たとえば、人口は原則2,000人以下。歴史的建造物を有し、村全体の景観が守られていること。そして、「観光地になりすぎていないこと」などの条件があります。

認定はゴールではなく、むしろスタート。基準を満たし続けられなければ、リストから外されます。だからこそ、これらの村には、観光地特有の慌ただしさがありません。

こうした「美しい村」は、南仏だけでなく、アルザスやロワール、オーヴェルニュなど、フランス全土に点在しています。そのなかで、今回私が旅先に選んだのが南仏。理由は、気候と光、そして移動のしやすさ。

訪れたのは9月初旬。夏の長いバカンスシーズンが少し落ち着き始め、村の日常が戻ってくる頃です。人の気配はあるけれど、追い立てられる感じはない。南仏の村を歩くには、ちょうどいいタイミングでした。

 

日本から南仏へのアクセス

マルセイユの港
撮影:ワタシト編集部

南仏は遠そうに見えて、実はアクセスは意外とシンプルです。基本は日本 → パリ → 南仏。日本から パリ(シャルル・ド・ゴール空港)へは直行便があり、そこから国内線またはTGVで南下するのが王道ルートです。

今回の旅で私が選んだのは、価格重視のルート。利用したのは中国東方航空で、成田 → 上海浦東国際空港 → マルセイユという経由便を使いました。

ヨーロッパ行きとしては航空券がかなり安く、その分、宿や現地移動に余裕を回せたのが大きなポイント。上海での乗り継ぎも拍子抜けするほどスムーズで、パリを経由せず、いきなり南仏に入れるのは想像以上に楽でした。

フライトは合理的に、旅先で余白をつくる。南仏の一人旅には、この選び方がちょうどよかったと感じています。

実際に回った南仏7日間のルート(がんばらない旅)

今回の旅では、「がんばらない」も意識しました。移動はまとめ、拠点を決め、無理のない距離感で回りました。
★=フランスで最も美しい村(Les Plus Beaux Villages de France)」に認定されている村。

 

訪問地

内容・旅のメモ

1日目マルセイユ到着日は移動のみ。観光はしません。南仏に来たという事実だけで、今日は十分。
2日目アヴィニョンGVが停まり、旧市街はコンパクト。拠点をここにすると、旅全体が落ち着きます。
3日目リル・シュル・ラ・ソルグ水とアンティークの町。買い物をしなくても、歩くだけで満たされる場所。
4日目アルル / サン・レミ・ド・プロヴァンスゴッホゆかりの町。好きだからこそ、この日はしっかり深追い。
5日目美しい村を巡る一日(レンタカー)★ルシヨン/★ゴルド/フォンテーヌ・ド・ヴォークリューズ/★セギュレ写真映えと現実(坂と体力)のバランスを学ぶ一日。
6日目エクス・アン・プロヴァンス少し都会に戻って、ショッピングとマルシェを楽しむ。
7日目★ルールマラン静かで、控えめで、でも記憶に残る。旅の終わりにちょうどいい村。

アルルとサン・レミは、深追いすると決めていた日(4日目)

ゴッホ「夜のカフェテラス」
撮影:ワタシト編集部

フィンセント・ファン・ゴッホが暮らし、描いた町として知られるアルルとサン・レミ・ド・プロヴァンス。私はゴッホがとても好き。ゴッホをテーマにゆかりのある土地を訪ね続けています。この旅でも、この日は最初から「深追いする日」と決めていました。

実際に歩いてみると、拍子抜けするほど人は多くありません。行列もなく、急かされる感じもない。ゴッホが歩いた場所を、自分のペースで辿れる。そんな静かな時間がありました。

アルルの街角で印象的だったのは、「夜のカフェテラス」の舞台として知られる場所にあった店が、すでに廃業していたこと。看板もなく、観光地らしい賑わいもない。けれど、その分、絵と現実の距離が近づいたような気がしました。

「有名だから混んでいる」という先入観は、ここでは当てはまりません。ゴッホの足跡は、思っていたよりも静かに、街の中に残っていました。南仏のなかで、この日は、時間をかけて歩いてよかった一日です。
 

美しい村を巡った一日(5日目)

南仏レンタカー
撮影:ワタシト編集部

この日はアヴィニョンでレンタカーを借りて、南仏の村をいくつかまとめて回りました。写真で見ると軽やかですが、実際はなかなか濃い一日。「美しい」は、案外、体力を使います。

ルシヨン

ルシヨン
撮影:ワタシト編集部

赤土の色が印象的な村。村全体がオレンジや赤茶色に染まっていて、歩いていると、視界の色味がいつもと違います。昼間は観光客が多く、写真を撮る人の背中を追いかける感じ。でも、夕方になると人が引き、色も少し落ち着く。派手さが抜けたあとのルシヨンが、いちばんきれいでした。

ゴルド

ゴルド
撮影:ワタシト編集部

南仏の“顔”として知られる村。遠くから見る分には完璧ですが、近づくと坂が急で、容赦がありません。石畳、上り坂、強い日差し。おしゃれな景色の裏で、現実を突きつけられます。南仏で学んだことのひとつは、おしゃれは体力という事実でした。

フォンテーヌ・ド・ヴォークリューズ

フォンテーヌ・ド・ヴォークリューズ
撮影:ワタシト編集部

この日、いちばん肩の力が抜けた場所。湧水の色が驚くほど深く、見ているだけで気持ちが静まります。写真を撮る手も止まり、しばらく何もしない時間。ここでようやく、「今日は急がなくていい日だった」と思えました。

南仏の旅に、こういう場所は必要です。

セギュレ

セギュレ
撮影:ワタシト編集部

観光客が少なく、静かな村。歩いていると、住民の生活音のほうがよく聞こえます。華やかさはありません。でも、「こういう村を探していたんだ」と、腑に落ちる感覚がありました。一日の最後に訪れたのが、ここでよかった。

ルールマラン

ルールマラン
撮影:ワタシト編集部

※この日は別日ですが、同じく「フランスで最も美しい村」認定なので、★枠で追記しておきます。
エクス・アン・プロヴァンスからバスで日帰り観光ができるルールマラン。センスのいい小さなショップが点在し、雑貨や器、服や本まで、主張しすぎないのに「ちゃんと選ばれている」ものが並びます。

ルールマラン
撮影:ワタシト編集部

道端では猫が昼寝をしていて、誰もそれを起こさない。時間に追われる気配がなく、歩くテンポが自然に落ちていきます。

「美しい村」だけじゃない。南仏には、立ち寄りたい街や村がたくさん

コードブルー線
撮影:ワタシト編集部

「フランスで最も美しい村」は、旅の目印としてとてもわかりやすい場所です。でも、実際に南仏を旅して感じたのは、見どころは認定村だけに限らないということでした。

アヴィニョン
撮影:ワタシト編集部

たとえば、旅の起点になったアヴィニョン。ここは「美しい村」に認定されていませんが、旧市街を歩くだけで、歴史の層や街のリズムが自然と伝わってきます。拠点として過ごすには、ちょうどよく落ち着いた街でした。

また、マルセイユから西へ伸びる海岸線、コード・ブルー沿いの町や集落も印象的です。有名な地名でなくても、海の色や光の入り方だけで、「あ、南仏だな」と思える瞬間がたくさんありました。

認定されているかどうかより、自分の足が止まったかどうか。もう少しここにいたいと思えたかどうか。
南仏は、そんな基準で選んでも、ちゃんと応えてくれる場所でした。

南仏は、がんばらない人にちょうどいい

セギュレのカフェ
撮影:ワタシト編集部

南仏は、おしゃれで、華やかで、キラキラ。そう思って来ると、少し拍子抜けします。店は閉まり、昼寝は本気。坂はきつく、猫は我が物顔。

でも、その全部がいい。

大人の一人旅は、「全部見なくていい」と自分に許せた瞬間から、うまくいきます。少し遠回りするくらいが、ちょうどいい。南仏の小さな村は、そう教えてくれました。

もし、次の旅で、「どこを回ればいいんだろう」、「ちゃんと楽しめるかな」そんなふうに少し立ち止まってしまったら、南仏の小さな街や村を思い出してみてください。有名じゃなくてもいい。全部を見なくてもいい。認定されていなくても、ガイドブックに大きく載っていなくても、心がほどける場所はちゃんとあります。

自分のペースで歩いて、疲れたら座って、気に入った場所に少し長くいる。それだけで、旅は十分に豊かになります。南仏は、そんな旅を受け止めてくれる場所でした。

次に旅に出るとき、あなたが選ぶ場所のひとつに、この“少し遠回りな南仏”が加わったらうれしいです。

※本記事の内容は、本記事作成時の編集部の調査結果に基づくものです。
※本記事に掲載する一部の画像はイメージです。
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編集者
ライター
おだりょうこ
猫と旅、音楽と映画で形成されたライター&エディター。旅欲が止まらない旅ジャンキー。料理は作るの食べるのも好き。日々の暮らしにひとさじほどの丁寧さを意識することを心がける日々。
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