
北欧・デンマークで“デザインの本場”を歩く──VAT25%の壁を越えると、ひとり旅はもっと自由になる
デンマークを旅しました。世界幸福度ランキングで常に上位に入り、治安がよく、ひとり旅との相性がとてもいい国です。でも、ひとつだけ高くそびえる壁があります。VAT(付加価値税)25%。 物価の高さは覚悟が必要。それでもなお、“行ってよかった”と胸を張って言えます。ヤコブセンの建築にふれ、北欧デザインの美しさを全身で浴び、家の中の時間を大切にする文化を体感したからです。今回は、25%の壁とうまく付き合いながら楽しむ方法と、実際に旅してわかった「デンマークって、こんなにいい国なんだ!」という体験をお届けします。
目次
みんな北欧が好き。わたしも好き。その“理由”は思っていたより深い

北欧って、どうしてこうもわたしたちを惹きつけるのでしょう。かわいいから? おしゃれだから?もちろんそれもあります。でも実際に歩いてみると、理由はもっと静かで深いところにあると気づきます。
世界幸福度ランキング上位の国が持つ“落ち着き”
デンマークに降り立つと、まず“街のテンション”が静かなことに気がつきます。
ハイになりすぎず、かといって暗くもない。幸福度ランキングで上位に入る国らしい、肩の力の抜けた雰囲気。歩いているだけで、こちらも呼吸が深くなる感じがします。「幸福って、案外こういうことかもしれない」と、悟りを開きそうになりました。
ひとり旅でも歩きやすい、治安と空気感

ひとり旅でいちばん気になるのは、やっぱり治安。
でもデンマークは、夜でも女性が歩ける空気があります。もちろん油断は禁物ですが、“街の落ち着き”がそのまま安全につながっている感じ。道端でGoogleマップをくるくる回していても、変な視線を感じない。これ、旅の自由度が全然違います。
北欧デザインは“かわいい”だけじゃない

北欧デザインは“かわいい”の代表選手みたいに扱われがちですが、実際に歩くとわかります。
かわいいの奥に、ものすごく硬派な哲学があるということを。
日照時間が短い国だから、家にいる時間が長い。だから、生活のすべてに“居心地の良さ”と“色の温度”が必要になる――そんな暮らしの事情がデザインににじんでいました。
ヒュッゲ──寒い国に生まれた、あたたかい言葉

ヒュッゲとは「心地よさ」や「大切な時間」を指すデンマーク語。“ぬくぬくを共有する文化”のようなもの。キャンドルの灯りや、小さな部屋のぬくもり。カフェでコーヒーを飲んでいると、なぜか心があたたかくなる瞬間があります。それがヒュッゲ。
派手な幸せではなく、じわりと「これでいいか」と思える、北欧独特のぬるい幸福感のことです。
わたしがこの国を好きになった理由は、まさにここにありました。
デザインと歴史と自由が混ざる街・コペンハーゲン

北欧デザインの街、童話作家アンデルセンを生んだ文学の街、そしてちょっとだけ“自由すぎる”街。それがコペンハーゲンです。歩けば歩くほど「へぇ!」が増えるまちでした。
ブラックダイヤモンド──本は国の宝

建築ユニット、シュミット・ハマー&ラッセンによる外壁が黒く輝く王立図書館・通称「ブラックダイヤモンド」。その名の通り、南アフリカ産の黒色花崗岩で覆われた外観はまるで巨大なブラックジュエリー。王様が「本は国の宝だ」と言って、大切な蔵書を黒い宝石箱にしまったという逸話まであるんです。

内部は新館と旧館が渡り廊下でつながっていて、そこはまるで “未来から過去への架け橋”。一歩進むごとに時空の狭間に迷い込んだような気分になります。居心地がよすぎるあまり、翌日PC を抱えて再訪し、旅先で普通に仕事しました(はかどること請け合い!)。
名称:デンマーク王立図書館(Det Kongelige Bibliotek)
所在地:Søren Kierkegaards Plads 1, Copenhagen
開館時間:10:00~20:00
料金:無料
アクセス:メトロ「Kongens Nytorv」駅から徒歩10分
The Coffee Collective──HAYの家具に囲まれる幸福

コペンハーゲンでもっとも勢いのあるコーヒーチェーンといえば、The Coffee Collective。市内に複数店舗があるのに、どこも“チェーン感”が全然ないのがすごいところ。
店内はデンマークのインテリアブランド 「HAY」のインテリアでまとめられ、北欧の“控えめなのに可愛い”の真髄みたいな空間が広がり、椅子に座った瞬間、「うん、家の中を大事にする国のカフェだな」と分かります。コーヒーは浅煎りの華やかな香りが特徴で、店員さんがみんな穏やか。“急がない空気”が店内に満ちていて、ひとり旅の心をそっとほぐしてくれました。
名称:The Coffee Collective
所在地:Kristen Bernikows Gade 2など、市内に複数店舗あり。
営業時間:月~金 7:00–19:00、土日 8:00–19:00(店舗により多少異なる)
アクセス:地下鉄駅または主要駅から徒歩圏。観光の合間にふらっと寄りやすい。
ニューハウン──絵本の中に迷い込んだみたい

運河沿いにカラフルな家がずらり。どこを切り取ってもポストカード。アンデルセンもこの街を愛したそうで、なんというか…かわいいが渋滞している感じ。歩いてるだけで“今日のわたし、物語の主人公かな?”と思えてしまう場所です。
名称:ニューハウン(Nyhavn)
所在地:Nyhavn, 1050 Koebenhavn
アクセス:Noerreport駅から地下鉄で約2分
クリスチャニア──自由の街は今日もラブ&ピース

コペンの街中にある自治地区クリスチャニアは、ヒッピー文化の名残りが強く、“タバコじゃない独特のにおい”がふわりと漂っている街。
路上では“葉っぱ”(お察しください)が堂々と売られていて、そのエリアの撮影は禁止。住居ゾーンは驚くほど穏やかで、誰も観光客に絡んでこない。独自ルールは「暴力禁止」「車の乗り入れ禁止」「武器禁止」「ハードドラッグ禁止」(ハードじゃなきゃいいのか…とひとりで心の中でつっこんでしまいました)。
自由の大らかさを感じるエリアです。
名称:クリスチャニア自由都市 (Christiania)
所在地:Bådsmandsstræde 43, postbox 27, 1407 København K,
アクセス:コペンハーゲン中央駅から「9A」のバスに乗り、Skt. Annæ Gade (Prinsessegade)で下車
チボリ公園──ノスタルジーの宝箱

チボリ公園は世界最古級の遊園地で、アンデルセンも通った場所。きらびやかというより、“ノスタルジーの宝箱”みたいで、園内のどこを歩いても子どものころの記憶がふわっとよみがえります。
観覧車もメリーゴーランドも、音楽も、全部かわいい。かわいすぎる。わたしもつい、ホットチョコレートを飲みながら「ひとり遊園地って、悪くないな」と思ってしまいました。
名称:チボリ公園(Tivoli Gardens)
所在地:Vesterbrogade 3, 1630 Koebenhavn
営業時間:時期によって異なるため、公式サイトで確認を
アクセス:コペンハーゲン中央駅から徒歩1分
ルイジアナ美術館──自然と建築が手をつないでいるところ

コペンハーゲンから少し離れた海沿いにあるルイジアナ美術館は、森と海に抱かれた、作品と景色の境界が曖昧な建築様式が魅力です。
ガラスの廊下を歩くと、海が額縁みたいに見える。静けさのなかに美術がある、このバランスが最高なんです。
名称:ルイジアナ現代美術館(Louisiana Museum for Moderne Kunst)
所在地:Gl Strandvej 13, 3050 Humlebaek
開館時間:[火~金] 11:00~22:00、[土・日・祝日] 11:00~18:00(月曜日、祝日、年末年始は休館)
料金:一般 145 DKK、学生 85 DKK
アクセス:コペンハーゲン中央駅から電車で約35分
北欧デザインの父・ヤコブセンを歩いて知る

北欧デザインの話をすると、必ず名前が出てくるのが アルネ・ヤコブセン。椅子だけじゃなく、建築も、都市計画もした、“全部わかってる人”。デンマークに来たからには、彼の足跡を辿らない理由なんてないのです。
誰よりも先に“未来の形”を知っていた人
スワンチェア、エッグチェア、PHアーティチョークランプ。写真で見たことがある“あの家具たち”を生んだのがヤコブセンです。彼はインテリアデザイナーではなく、“空間そのものをデザインした人”。
ホテルも、椅子も、照明も、全部をひとつの世界観として組み上げた、いわば「北欧の建築界のエヴァンゲリオン初号機」みたいな存在(?)。設計思想にふれると、すべてが線でつながります。
名作椅子とホテル建築をめぐる、小さな巡礼

ラディソン コレクションロイヤルホテルは北欧デザインの聖地。世界初のデザインホテルといわれています。わたしは泊まってはいません(財布が拒否した)が、ロビーだけで十分に満たされます。

スワンチェアやエッグチェアが当たり前の顔でそこにある。「デザインの名作って美術館に入るより、使われている場所で見るほうが刺さるんだ」と気づきました。
名称:ラディソン コレクションロイヤルホテル(Radisson Collection Royal Hotel)
所在地:Arne-Jacobsens Allé 1, 2300 København S
料金:1,240DKK~
アクセス:コペンハーゲン中央駅から徒歩約3分
ベルビュービーチに吹く風は、ヤコブセンの“余韻”

コペンハーゲン中央駅から、グレーラインの郊外列車に乗って20分ちょっとのショートトリップ。クランペンボー駅から海沿いを歩くと、ヤコブセンが一大リゾートプロジェクトを手がけたベルビュー・ビーチが現れます
海辺の建築は、光と影の引き算が美しくて、やけに胸に残ります。“何も足さない”彼の美学がそのまま海風と混ざり合っているような場所で、建築に興味がない人でもたぶん好きになるはず。
名称:ベルビュービーチ(Bellevue beach)
所在地:Klampenborg
アクセス:クランペンボー駅から徒歩約7分
VAT25%の壁とうまく付き合う、旅費のリアル

「北欧は高い」という声は本当です。ハンバーガのコンボが3,000円と知ったときは震えました。でも方法さえ知っていれば、無理をしなくても旅は成立します。ここでは、わたしが実際に使った工夫を紹介します。
直行便?経由便?──まずは“空の選択”で旅費が変わる
デンマークへの玄関口は コペンハーゲン・カストラップ空港。コンパクトで使いやすい空港で、中心地までは電車で約15分。拍子抜けするほど近い。空港内の案内表示は日本語もあり、安心感があります。
日本からの直行便は、現在 SAS(スカンジナビア航空) が運航しています。直行便はやっぱりラク。「乗り換えで迷子になる未来の自分」に心当たりがある人は、強くおすすめします。
ただし、高い。通常は20万前後することも珍しくありません。でもわたしは13万円で飛びました。理由は一つ。SASのメーリングリストに登録していたから。“SALE”の文字がメールに届いた瞬間、条件反射でポチッと購入。
そして、知っておいてほしい裏技がもうひとつ。経由便は安い。とにかく安い。
フランクフルト、アムステルダム、ヘルシンキ経由など時間はかかるけれど、価格は直行の半額レベルになることも。
「多少遠回りしても節約したい」
「乗り継ぎ空港も旅の一部」
というタイプなら、経由便のほうが向いています。
食費はおいしく抑えられる。北欧の味は高級レストランだけじゃない

デンマークの外食は正直、高い。夕食をレストランで食べようものなら、お財布がひと晩でご機嫌ななめになります。でも安心してください。北欧の「日常のごはん」は、思っているよりずっと身近で、おいしくて、そして安い。
rma(イヤマ)|デンマークの“優等生スーパー”

なんといってもお財布とおなかの強い味方はスーパーのお惣菜。ローストポーク、ミートボール、サラダがパックになって並んでいて、ホテルで食べても「これで十分では?」と思えるクオリティです。
おすすめは「rma(イヤマ)」。牛乳もチーズもやたら丁寧に並んでいます。サラダ、サンドイッチ、スープが豊富で、“1,000円以内で北欧の味” が叶うのがうれしい。

目標は青いワンピースを着た女の子(イヤマちゃん)。物価の高い国で「ここなら安心よ!」と言ってるみたい。イヤマちゃんが描かれたエコバッグはお土産におすすめ。店舗はコペン市内の至る所にあります。

わたしのイチオシは、デンマークの伝統的なオープンサンドイッチ「スモーブロー」。バターを塗ったパンに魚介類、肉、野菜などの具材をたっぷりとのせて食べるのが特徴。 スーパーのデリコーナーや、市場でもよく見かけました。
デンマークはデニッシュ天国

そして忘れちゃいけないのが、ベーカリーのデニッシュ。
バターの香りがふわっと鼻の奥に届いた瞬間、「ああ、北欧ってこういう国なんだ」と納得してしまったほど。朝はベーカリー、昼はスーパー、夜はカフェのスープ……そんな“3点リレー”で、心も胃袋も満足します。
ホットドックスタンドは旅人に優しい価格

デンマークの街角には、小さなホットドッグスタンドがぽつんと立っています。物価がやたらと高いこの国で、ここはまるで“旅人の駆け込み寺”のような存在です。
フランクフルトの上に、デンマーク名物のレムラード、ピクルス、フライドオニオン。載せれば載せるほど幸福度が上がる気がするのは、きっとわたしだけではないはず。しかも600~800円ほど。デンマークでこの価格、ほぼ奇跡です。“北欧=高い”のイメージをひっくり返すのは、こういうストリートの味かもしれません。
つまり、食費は
高くしようと思えば高くなる。でも工夫すれば簡単に抑えられる。
この絶妙な自由度が、ひとり旅にはありがたいのです。
実際にかかった費用(4泊5日)
「北欧は破産する」という伝説はありますが、工夫をしたことで、わたしのお財布は無事でした。
| 項目 | 費用 | 工夫 |
| 航空券(SAS直行便セール) | 約13万円 | セール時に購入。直行でこの価格は優秀。 |
| 宿泊費 | 約6万円 | セルフチェックインの格安ホテルに滞在。デザインホテルはロビー見学で満足。 |
| 食費 | 1.5~2万円 | スーパーマーケットや市場のお惣菜とベーカリー中心。北欧のパンとチーズのレベルの高さは罪。毎朝「今日もパンでいい?」と自分に聞きながら食べていました。 |
| 交通費 | 5,000~7,000円 | 公共交通+徒歩。 歩けるからこそ見える表情がある。交通費も浮くし、心の整理もできる一石二鳥。 |
| 観光 | 6,000~1万円 | ルイジアナ美術館・王宮など。 |
| お土産 | 1~2万円 | “一品主義”で慎重に。わたしはロイヤルコペンハーゲンの食器を購入しました。 |
▶︎合計:約24~27万円
北欧としてはかなり現実的だと思いませんか?
デンマークはお金より“満足”が勝つ国

振り返ると、デンマークは物価の高さよりも、記憶の密度が勝っていました。“派手な感動”の国ではないけれど、帰国してから、ふと静かに思い出す場面が多い。そんな旅は、人をまた動かします。
旅はタイミングです。行きたいと思ったときが、いちばんの“適齢期”。VAT25%の壁も、飛行時間も、物価の高さも、旅心には勝てません。
次の旅先に迷っているなら、デンマークを選びませんか?
自分の速度で歩ける国は、いつだって味方でいてくます。
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