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更新日: 2026年9月6日

ごりごり挽く数分が、朝をつくる。ポーレックスのコーヒーミル

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電動なら数秒です。それでも、豆を入れてハンドルを回す朝があります。ごり、ごり、と音がして、少し遅れて香りが立つ。飲むまでに余計な工程がひとつ増えるのに、その面倒がなくならない。ポートレックスのコーヒーミルは、効率とは別のところで暮らしに残った道具です。長く使ってきた理由を、朝の台所と旅先から考えます。

便利になっても、ここだけは手でやりたい

ポーレックスのコーヒーミル
撮影:ワタシト編集部

朝、コーヒーを淹れます。豆を量って、ミルに入れて、ハンドルを回す。

ごり、ごり、ごり。

豆が砕ける感触が手に伝わり、少し遅れてコーヒーの香りが立ってきます。この数分、私は毎朝ほぼ同じ動きをしています。

もちろん、電動ミルならもっと早い。スイッチを押せば数秒です。文明はとっくにそこまで来ています。それなのに、私は自分でハンドルを回している。

なぜ自分で作業を増やしているのか。朝から軽い疑問です。でも、豆を挽いている時間は不思議と嫌いではありません。まだ頭が完全には起きていない時間に、手だけを動かす。ごりごりという音を聞いているうちに、今日も一日が始まるらしい、と体が少しずつ理解していく。コーヒーを淹れるための道具なのに、いつの間にか朝を始めるための道具にもなっていました。

この小さなミル、鹿児島県産です

ポートレックスのコーヒーミル
出典:ジャパンポートレックス

ポーレックスのコーヒーミルを長く使っていますが、あらためてその素性をたどってみると、ちょっと意外でした。鹿児島県産なのです。つくられているのは、名峰・霧島の麓。ポーレックスはこの地に自社工場を構え、セラミック製品の研究開発から製造までを手がけています。

毎朝、寝ぼけた顔でごりごり回していたものが、霧島生まれだった。

急にこちらの姿勢が正されます。でも、私はだいたいパジャマです。

ポーレックスのコーヒーミルの心臓部ともいえるのが、臼歯式のセラミック刃。金属ではなくセラミックを使うことで錆びる心配がなく、丸洗いでき、金属臭が豆に移りにくいのも特徴です。

ポートレックスのコーヒーミル
撮影:ワタシト編集部

豆を力任せに細かくするのではなく、臼のように挽く。その技術によって、コーヒー豆が持つ風味や個性をできるだけ損なわず引き出してくれます。

こう書くと、ずいぶん職人気質な道具に思えてきます。実際、その技術力は高く評価され、ポーレックスのコーヒーミルは鹿児島県で初となる文部科学大臣賞も受賞しています。

とはいえ、私が朝から「文部科学大臣賞……」と思いながらハンドルを回しているわけではありません。私にとってありがたいのは、もっと生活に近いところです。洗える。錆びにくい。電源はいらない。構造もシンプル。そして、ちゃんとおいしく挽ける。毎日使う道具に必要なのは、華々しい経歴より、今日も明日も面倒なく使えることなのだと思います。

でも、その「当たり前に使える」の裏側に、霧島で積み重ねられてきた技術がある。そう知ると、いつもの「ごりごり」が、ほんの少し違って聞こえてきます。

台所でも、旅先でも、存在感がうるさくない

コーヒー
撮影:ワタシト編集部

ポーレックスのミルは、細身のステンレス製。台所に置いても場所を取らず、バッグにも入れやすい。電源がいらないので、旅やアウトドアにも持っていけます。

コーヒーの道具というのは、凝り始めるとなかなか大変です。ドリッパーが増え、ケトルが増え、豆の保存容器が増え、そのうち道具のほうから、

「ところで豆の産地について、少しお話ししませんか」

と言ってきそうな世界があります。

私はコーヒーが好きですが、朝から道具に圧をかけられたくはありません。その点、ポーレックスは静かです。

豆を入れて、挽く。仕事はそれだけ。

ステンレスの筒状の姿も主張が強くなく、台所に置きっぱなしでも邪魔に感じません。使う側にコーヒー哲学を要求してこないところも、長く付き合えている理由なのかもしれません。

棚の奥に行かない道具には、理由がある

長く使う道具というと、頑丈であることばかりを考えがちです。でも実際には、壊れないだけでは残りません。

使うのが面倒。
洗うのが面倒。
出すのが面倒。
しまうのが面倒。

この「面倒」が積み重なると、どんなに立派な道具でも少しずつ棚の奥へ移動していきます。棚の奥には、かつて私たちが「一生使う」と誓ったものたちが、わりと静かに眠っています。

ポーレックスは、そこへ行かなかった。

セラミックの刃は分解して洗えるので、コーヒーの粉や油分が気になったら手入れができます。金属刃のように錆びる心配がないのも、日常使いにはありがたいところです。

そして何より、使い方が単純です。

豆を入れる。
ハンドルを回す。

長く使える道具には、耐久性と同じくらい「使い続けるのが億劫にならないこと」が大切なのだと思います。

手で挽くから、自分の一杯になる

手挽きミルには、もうひとつ面白いところがあります。挽き終わるまで、そこから離れられない。電動ならスイッチを押して、その間にトーストを焼いたり、冷蔵庫を開けたりできます。

手挽きはできません。

ごりごり。

ただ、挽く。

効率という点では、まったく勝ち目がありません。でも、その数分があることで、一杯のコーヒーが少しだけ「自分で淹れたもの」になる気がします。

豆の硬さによってハンドルの感触が違ったり、挽き始めた瞬間に香りが立ったりするのも、手で挽いているから気づけることです。毎朝同じことをしているようで、まったく同じではない。そんな小さな違いを感じられるところも、この道具を使い続けている理由です。

これは豆を挽く道具であり、朝を始める道具でもある

ポートレックスのコーヒーミル
撮影:ワタシト編集部

長く使っているものには、ときどき本来の用途とは別の役割が生まれます。ポーレックスは、もちろんコーヒー豆を挽くための道具です。でも私にとっては、それだけではなくなりました。

朝、豆を入れる。
ハンドルをつける。
ごりごり挽く。
お湯を沸かして、ゆっくり注ぐ。
香りが立つ。
ようやく飲む。

急いでいる朝には、もっと簡単な方法はいくらでもあります。それでも、この数分をなくそうとはあまり思いません。暮らしは、なくても困らない時間で案外できています。

コーヒーを手で挽くことも、たぶんそのひとつ。効率だけを考えれば、真っ先に削られそうな時間です。でも、朝くらい、少し遠回りしてもいい。

明日の朝、コーヒーを淹れるなら、いつもより少しだけ手間をかけてみませんか。
豆を挽く。香りを待つ。お湯を注ぐ。たったそれだけですが、慌ただしく始まる一日の前に、自分のためだけに使う数分ができます。

便利なものを増やすだけが、暮らしをよくする方法ではないのかもしれません。
私は明日の朝も、たぶんまた、ごりごり挽きます。

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※本記事の内容は、本記事作成時の編集部の調査結果に基づくものです。
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執筆者
ライター
おだりょうこ
猫と旅、音楽と映画で形成されたライター&エディター。旅欲が止まらない旅ジャンキー。料理は作るの食べるのも好き。日々の暮らしにひとさじほどの丁寧さを意識することを心がける日々。
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